円高が進む中、株式市場は再び不安定な動きを見せています。8月に一度暴落した相場は回復しつつあったものの、最近の円高の進行が再びネガティブな要素として浮上してきました。特にドル円相場は、1ドル=160円台から140円台へと急変動しており、これが投資家の心理に大きな影響を与えています。
それでも、円高の進行はすべての銘柄にマイナスではありません。むしろ、この状況を活かし、投資チャンスを見出せる「円高メリット株」への注目が集まっています。株探の人気テーマランキングでも「円高メリット」が上位にランクインしており、内需関連の銘柄が再び脚光を浴びています。特に、輸入コストが下がりやすい小売りや食料品などの内需系銘柄が有望視されています。
円高の恩恵を受ける注目銘柄
まず注目したいのは、**ニトリホールディングス(9843)**です。ニトリは円高の進行とともに株価が急上昇しており、7月半ばの1万6000円台から、わずか2カ月で2万3000円台に迫る勢いを見せています。実際、ニトリのような企業にとって、円高は輸入コストの低下に直結します。家具やインテリア製品を多く海外から調達しているため、為替の影響を強く受けやすい企業です。
また、同社の4-6月期の決算も好調で、増収増益を達成しており、業績の裏付けが株価の上昇を支えています。ニトリのような円高メリット銘柄は、投資家にとって重要な選択肢となるでしょう。
次に紹介したいのは、100円ショップ業界で知られる**ワッツ(2735)**です。同社は「Watts(ワッツ)」ブランドを筆頭に、「meets.(ミーツ)」「silk(シルク)」などのブランドを展開しており、全国的に低価格の商品を提供しています。現在、インフレの影響で消費者の節約志向が高まっていることもあり、100円ショップの需要が増しています。ワッツは月次売上高が11カ月連続でプラスを記録しており、円高局面でも安定した成長を見せています。これも、輸入商品のコスト低下が業績に貢献しているためです。
加えて、**丸大食品(2288)**も注目すべき円高メリット銘柄です。同社は主にハムやソーセージを製造・販売している食品メーカーで、原材料の多くを海外から調達しています。円安局面では原材料コストが高騰し業績に逆風となっていましたが、円高が進むことでコストが抑えられ、業績は回復基調にあります。特に今期は、営業利益の進捗率がすでに4割を超えており、株価も8月の暴落相場から急速に反発し、年初来高値を更新しています。
このように、円高メリットを享受できる銘柄は、内需系企業の中でも輸入に依存する割合が高い企業が中心となります。ニトリ、ワッツ、丸大食品はその典型的な例であり、今後も為替相場が円高に傾く限り、これらの銘柄は注目の的となるでしょう。
米国経済と為替の影響
しかし、為替相場は常に変動するものであり、円高がどこまで続くのかを予測するのは難しい面もあります。現在、米国ではインフレ抑制のための利下げ観測が広がっており、これがドル安・円高の動きを強めています。また、日本では追加利上げへの警戒感が強く、日米金利差が縮小するという思惑も、円高の要因となっています。
とはいえ、今後の米国の政治動向次第では、再び円安が進む可能性も否定できません。例えば、11月の米大統領選挙で共和党のトランプ氏が勝利した場合、減税や高関税によるインフレ再燃が予想され、それに伴い米国の金利が上昇する可能性があります。そうなると、再び円安に転じるリスクがあります。一方で、民主党のハリス氏が勝利した場合でも、中間層向けの支援策がインフレを継続させる可能性があり、これも為替相場に影響を与えるでしょう。
したがって、政治的な動向にも注意を払いながら、為替相場の動きを見極めることが重要です。しかし、現時点では円安に急激に回帰する可能性は低く、しばらくはドル安・円高のトレンドが続くと考えられます。
円高メリットを活かした投資戦略
現在の円高局面では、内需系の輸入依存度が高い企業に投資することが、リスクを抑えながら利益を上げる有効な戦略となるでしょう。例えば、ニトリやワッツ、丸大食品のような企業は、円高の恩恵を最大限に享受できる銘柄であり、今後も業績の改善が期待されます。
さらに、他にも円高の影響を受けやすい銘柄としては、**日本製紙(3863)**が挙げられます。紙パルプ業界は、原材料の輸入が大きなコスト要因となっているため、円高によってコストが削減され、利益率が向上します。日本製紙は製品価格の見直しやコストダウンに取り組んでおり、円高が追い風となることで、さらに業績が改善する可能性があります。
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